ANNEX(=別館)。ロンドンへ旅行した時の日記「ロンドン旅行記」
他サイトとのコラボレーション・コンテンツ「黒猫ドウメイ」
都会でタヌキを見かけた事を大袈裟にレポートした「阿佐ヶ谷のタヌキ」などを掲載。
この別館は更新予定がまだありますのでお楽しみに! / ※私は阿佐ヶ谷在住じゃないので念のため
黒猫ドウメイ
++第1回 KABOさん ++第2回 Miaさん
猫、マーク・ボランなどなど、コラム形式でのコラボレーションを募集しています。
次回は近日公開予定です。

黒猫ドウメイ 第2回
TEXT & PHOTO BY Mia -owner of catmint cafe-
突然パッチリ目が覚めて、何だか勢いでそのままベッドを降りてしまった。
それから自分が寝ていたはずの場所を振り返って、ようやく「?」マークが頭に浮かんだ。
あるべきベッドがなく見慣れた部屋でもなく、ただ、暗闇の中に立っていた。
一人称であるはずの自分は、動いて見て思考しているもう1人の「私」を眺めているだけだった。「私」がいないと、この暗闇に紛れて自分の存在を忘れてしまいそうだった。
暗闇・・・暗くて何も見えないのとは違う、そう、星のない宇宙空間にいるような。
立っているけれど、上下左右がないような。でも、遠くまで見渡せている。
・・・夢?
真正面の目の高さに黄色い光が4つ並んでいた。
良く見れば、ちゃんと姿も見えた。
二つ、振り返って此方を見ている漆黒の猫の影。モノの名前を支配して精霊を操り空をも飛んだという、かの者たちの僕であるかのごとく佇む様は、最初は幻影としか思えなかった。
光源もないのに淡い光に包まれた姿が陽炎のように目に映り、それは彼等自身がこの空間に浮かぶ星であるかの如く・・・。

見渡せば、あらゆるものが点在していた。
この暗闇で存在を見せる光は、その存在そのものなのだ・・・

・・・ここに存在?してる?

――― 起きちゃったみたいだね。
自分が暗闇に溶けてしまうような不安から一歩明るみに出て、ようやく「言葉」が口から出てきた。ネオ?そこで何をしているの?ここはどこ?家は、寝室はどこ?
――― 説明なんて出来ないよ。
やや時間をおいてポツリと呟きが返ってきた。
…ネオ?ああ、やっぱりヒトの言葉を操れるんだ、そして、やっぱりネオはこんな可愛い少年のような声なんだ、なんて妙に納得したら、人型の影が浮かんできた。
人間の姿のネオとカートに会えたような気がした。
――― それは想像に過ぎない。人間が思うだけ。何も借りない。
察したようにカートが無表情に冷たい声でそう説明した。そんなこと、どちらの声なのか最初から区別がついていた時に、わかってあげていて良いはずだったのに。
ちょっと落ち込んだら、もう人型なんて見えなかった。ネオもカートもまた前を向いてしまった。
光.そう そこに素敵な光があります.
情熱という炎を灯したイメージの
情けなく自己嫌悪にひたる者たちが
大勢で支えている棒の先についた旗.
恐怖がぶつかるたびに ひるがえり
素敵な光を放ちます.
一番に近くに存在するものは草原で、その一部が幼い頃に憧れた、色に溢れた花畑になっていた。
私の右上に風景がぽっかり浮かんでいるのだ。
その風景を不思議にしているのは、ココが狙い所ですよ、と言っているかのように真ん中に立つ一本の旗だ。お子様ランチのオマケみたいだ・・・。

白い旗には薄い灰色の、だけどちゃんと読める文字がビッシリと模様になって並んでいた。

カートとネオ。
彼らが見ていたものは大きな大きなトリカゴで、中に一羽の小さい青い鳥がいた。
綺麗。でも、眺めていると不思議な事に気付いた。その鳥かごには扉がない。
金属性の丸い板のふちに、同じ金属性の細い棒が少しずつ隙間を空けてくっついて、途中から湾曲して上に伸びていて、最上部はドーム型になっている。
きっと誰もがイメージしやすい「とりかご」なんだけれど、扉がない。
あれじゃ、表に出られない。
――― 出られないんだったら入ることも出来ないよ。
とからかっているようなネオの声。そういう意味で言ったわけじゃないのに、いつまでもバカにされてはいられない。
カゴの一部を切ってあげるよ。
――― 外に出てきたら、食べてしまうかもしれないよ。
今度は嘲笑を含むような声でカートが言った。
『同じだ。』
カートの声を聞いて、台詞を読んで、トリカゴに無いはずの扉を開ける - 私のための -
鍵を見つけたと思えた。
多過ぎる道標を延々と頼り、踏みつける大地のないフワフワした思考の世界を歩いていたと知った。今、光の筋が射し、その光を隙間から放つ扉が見えた。
あの扉は、あれは、自分の手で開けなくちゃいけないの!
第三者のように自分の言動を見つめた一人称の「私」が、私になって、ようやく思考ははっきりしたはずなのに。
視界がぼやけてきてしまった。
――― 見ようとすればそこに寝ていたベッドが見えるでしょう?
――― おやすみ。また会えると良いね。
交互に彼等の声がして・・・・。

 ぺしぺしと何かに頬を叩かれている自分に気付いた。目を開けると目の前に猫の顔。
『いつも』と変わらない朝の光景。カートに猫パンチをくらっていた。「んあぁ゛っ!」
・・・はいはい。朝御飯でしょ、ちょっと待ってよ。
目をこすりながらベッドから這い出ると足元ではネオが喚く。「んなー!!」
わかったってば。「おはよう。ネコども。さて、朝飯食いますか!」

そう、いつだってこうやって、彼等と話している自分がいる。ねぇ、これでいいんだよね?